2011年1月12日水曜日

大間マグロに救われた男

これはある日の大間マグロ一本釣り漁師の話です。

この男は私の友人(小鷹勝敏)であり同級生(七一歳)。小学校~中学校二年まで大間で一緒に学びました。
昨夜この友人より船玉祭に招待され、したたかお酒を御馳走になり、大間のマグロ漁師のすごい話を聞かされました。まあ、聞いてください。

昨年(平成22年10月21日)彼はいつもの通り、いつになく穏やかな津軽海峡にまぐろ漁のために一人で船を出しました。ふと気付くと、とも(船の後部)のテントのロープが緩んでおり、すぐにケーシング(ふなべり)に上がりロープを締める作業に取り掛かりました。

然しロープを締める為に全身の力を入れた瞬間!

ロープが切れて、彼は背中からあっという間に津軽海峡へ落ち、その瞬間、それまで握っていたマグロのシテ(道糸)を離してしまったのです。このシテは自分と船をつなぐ唯一のものですから、
彼は無我夢中で泳ぎ、シテになんとかたどりつくことができました。
彼はシテに捉まりながら、近くの僚船に大声で助けを求めましたが、何度叫んでも、大きな船のエンジン音にかき消され、どれだけ叫んでも誰も気付いてくれませんでした。

そうしている間にも、流れの速い津軽海峡のこと。どんどん自分の体は船から離れ、300mも離れそのまま45分も時間が経ってしまいました。彼の意識は朦朧とし、かすかに頭に浮かぶ家族の顔もとぎれ、とぎれとなり、いよいよ自分の最後を覚悟したとき、

防水の携帯を首から下げていることに気が付きました!

彼は気力を取り戻し、急いで漁協、消防署に電話をかけ、救助されました。
救助が来るまでの時間、彼の記憶はほとんどなかったようです。
普通の人なら、ここで暫くは漁に出るのが怖くなるところですが

大間のマグロ漁師根性は、半端じゃない!

彼は、なんと1週間後又同じ釣り場へ向い、135キロのマグロを
つりあげ又翌日も釣り上げました。これは、まぐろと船玉神と防水携帯が彼を救った
大間の夜話です。

※船玉神とは海上安全と豊漁の神様です。大間の町では1月11日、1000軒の漁師の家で厳かに神事が行われます。

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